Saturday, August 17, 2013

海外就職のリアルな話

 ここ最近、森山たつをさんを始めとするブロガーのお陰で海外就職が注目されているようなので、1年ほど前に海外就職した経験から、自分なりにリアルなところをお話ししてみたいと思います。

発展途上国は厳しい

森山さんは、「景気のいいところで仕事ができる」、「給料水準は低いが、物価が安いので高い生活レベルで暮らせる」など、主にアジアでの就職のメリットを説いています。確かにうなずける点はあるのですが、次のようなデメリットもあります:

  1. 貯金力が低くなるため、日本でお金が必要になったり、帰国を強いられた場合に困る
  2. 育児に適した環境を整えにくい

 まず、1について見ていきましょう。森山さんの記事には、「物価が4分の1のジャカルタで、手取り16万円」とあります。先進国での生活費をざっくり20万円と仮定すると、ジャカルタでの生活費は5万円となるので、月11万円貯金ができる計算となります。一方、先進国で手取り40万の仕事をすると、貯金は月20万円です。夫婦で共働きしたり、節約したりするとこの差はさらに広がります。例えば、ジャカルタで頑張って生活費を1万円に切り詰めたところで15万円しか貯金できませんが、先進国で生活費を10万円に切り詰めると、30万円貯金する事ができます。

 つまり、発展途上国で生活している分にはいいのですが、親の具合が悪くなるなど何かの事情で日本でお金が必要になったり、帰国せざるを得なくなると一転困窮してしまうおそれがあるのです。年金についてもしかりです。先進国で貯まった年金で発展途上国で暮らすのは容易ですが、発展途上国で貯めた年金で先進国で暮らすのは困難です。先進国にゆかりのある人が発展途上国で働くというのは、お金の面で非常にリスキーな選択なのです。

 次に、2について見ていきましょう。僕は日系メーカーの海外事業部で働いていたので、中国やインドで仕事をする機会が多くありました。特にインドには延べ半年くらい滞在し、いい思い出もたくさんあるし大好きな国なのですが、子供を育てるという視点から考えると選択肢から外さざるを得ないのです。

 まず、単純に空気が悪い。そんなもんどうにでもなるじゃないかと言われてしまいそうですが、水や食べ物はお金で解決できても、空気だけは避ける事ができません。インドにいた頃はよく散歩に出かけていたのですが、時間帯や場所が悪いと常時タバコをすっているようなもので、冗談抜きに息が苦しくなるほどです。国によって差はあれ、新興国の都市部である限りは、深刻な大気汚染を覚悟しなくてはいけません。

 また、なんだかんだ言っても教育環境も先進国の方が整えやすいです。これは好みもありますし、ちょっとキワドい意見になってしまいますが、発展途上国は社会・文化が先進国ほど進歩的でない傾向があります。例えば、インドでは未だ家柄や星座の一致をベースにしたお見合い婚が主流で、恋愛結婚は稀です。恋人ができて、結婚したいと思ってもできないことの方が普通なのです。女性の権利や、多様性の尊重、博物館・美術館やインターンシップの充実度など様々な面で、発展途上国の方が遅れている傾向があるというのが、残念ながら現実です。子供にはいろんな社会のあり方を経験してほしいので、発展途上国に触れる機会は持ってほしいなと思いますが、ぶっちゃけ欧米の進歩的な環境でのびのび育ってほしいというのが本音です。

本社からの海外赴任でないかぎり、日系企業は避けるべし

僕が勤めていた日系メーカーでは、海外赴任されるとそれはもう良い事尽くめでした。いろいろな手当がついて給料は上がるし、家はいいところに住めるし、海外にいる間は退職金の貯まり方が2倍になるし、現地法人ではポジションが1つ2つ上がるし、日本よりも仕事が楽な事が多いし、帰国すると昇進に有利だし、本当に海外赴任ほどおいしい話というのはそうありません。

 ところが現地採用というだけで状況は一変します。給料は低いし、昇進はまず望めません。海外赴任組からは「現地の人」と呼ばれさながら身分制度のようなものです。中でも現地採用された外国人は英語スキルなどを買われて要職についたり、本社に呼ばれて活躍する場合がありましたが、日本人は本社にたくさんつかえているので、重用される事はまずありません。その一方仕事ぶりは日本と変わらないので、日本の大企業に派遣で勤めているような状況になります。

 一方欧米系の企業であればそういった露骨な身分制度はありませんし、日本市場進出に関わる仕事などにつけば、社内で頼りにされ面白い仕事ができ、帰国した場合のキャリアも広がります。

 技術者であれば、日本に全く関係ない企業も十分選択肢となります。例えば、僕は今、日本に縁もゆかりも一切ない企業に勤めています。ロンドンやシリコンバレーなど国際化が進んでいる都市では技術者を各国から集めるのは普通になっているので、日本人だからと言って採用や昇進に不利になる事は通常ありません。給料も日本で技術職をやるより貰えることが多いですし、違った働き方や社風を経験でき得る物も多いでしょう。特にソフトウェア開発者の人には、是非日本に関係ない会社も選択肢に入れてほしいところです。








 

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